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コラム
コラム : 平成28年2月議会一般質問
投稿日時: 2016-03-08



H28年2月議会一般質問  再生 ← 一般質問での録画映像を再生します。 

通告に従い、順次、質問して参ります。

本県は、今後も医療・介護等の社会保障経費が増加するなど、厳しい財政状況が続きます。こうした中、経験したことのない少子・高齢社会を迎え、様々な行政課題に対応するためには、限られた財源を効率的、重点的に配分することがこれまで以上に求められます。今後の愛知県の発展のためには、道路などのインフラの整備充実や新たな行政課題への対応なども進めながら、従来からの行政需要にも対処していかなければなりませんので、徹底した選択と集中が不可欠です。そのためにも事業の緊急度、優先度を考慮しながら、事業の工夫により、少しでも今後の財政負担を減らしていく手法を駆使していく必要があると考えます。行政課題に対して、事後的に対処する予算措置ではなく、事前に予防的な事業を実施することで、将来のコスト増をできるだけ抑制していくこと、また民間資金を効果的に活用していくなどの手法を、積極的に取り入れていかなければ、人口減少社会の中で大きな税収増が期待できない地方自治体としては、財政的に立ち行かなくなってしまうのではないでしょうか。

例えば、老朽化が進み修繕費用が増大するインフラや公共施設に、効率的に予防保全の補修工事を実施することで将来の維持管理費を抑制する、また認知症予防など事前の予防策を講じることによって社会保障に関する財政負担の軽減を図るなどの方策の徹底が、今後はさらに必要となってくると私は考えております。こうした観点に立ち、ハード施策・ソフト施策の両面から、順次質問してまいります。

まず、ハード施策でありますが、県立学校については、少子化の影響により生徒数が減少する中、学校施設の老朽化や学校の統合・再編などが大きな課題となっています。そこで本日は、校舎をはじめとする県立学校施設の長寿命化計画策定について取り上げます。

本県の県立学校では、平成15年度に策定した「第1次あいち地震対策アクションプラン」以降、2次、3次のアクションプランに基づいて、これまで10数年の間に、教室棟や体育館、管理棟などの耐震改修を進めてきました。この結果、平成27年度末の耐震化率については、県立学校で96.0%の進捗、平成28年度には、すべて完了する予定となっております。県立学校施設の耐震化に取り組む中、新たな課題として、体育館のつり天井などの非構造部材の耐震対策も必要となってまいりました。県では、平成27年度当初予算は約98億円を予算措置し、平成28年度当初予算案では約70億円を計上し、県立学校の耐震化と体育館のつり天井の耐震対策に取り組むこととしています。このように県立学校の耐震化の完了に目途がたってきたところ、今後はいよいよ県立学校の老朽化対策に本格的に取り組んでいく必要があるわけです。ちなみに、県立学校の建築後の経過年数は、昭和40年、50年代の生徒急増期に建設された施設が多く、築後30年を経過した建物は、再調達価額ベースで全体の約7割を超えている状況であります。さらに、10年後には、約9割まで増加するとのことであります。

 私は、今から3年余り前の平成24年12月県議会の一般質問において、厳しい財政状況の中、施設等の維持管理について予防保全策を講じれば財政負担の縮減効果が見込まれるので、その財政的裏付けを得る為にも、老朽化する県有施設及びインフラの維持・更新に関する長期的な財政支出見通しを早期に策定することが必要であると考え、そのための全庁的プロジェクトチームの発足を求めました。こうした提案に対し、知事は迅速に対応していただき、4か月後の平成25年4月には、全部局を構成員とする県有施設利活用最適化研究会を立ち上げ、県有施設の老朽化対策の検討に着手されました。その後、2年の検討調査を経て平成27年3月に、老朽化対策を軸とした中長期的な県有施設の利活用最適化に係る基本的方向性を取りまとめ、「愛知県公共施設等総合管理計画」が策定されました。この計画の目標は、可能な限り財政支出を抑えつつ「施設の老朽化に起因する重大事故ゼロ」を継続することであり、それに向け、庁舎、学校、道路、河川といった16の施設類型ごとに、個々の施設の長寿命化対策を盛り込んだ「個別施設計画」を策定し、具体的な対策を実施していくこととなっています。このうち、道路、県営住宅、下水道などは「個別施設計画」が既に策定されておりますが、県立学校など未策定のものもあります。さらにこれらの個別施設計画が全て策定された後には、どのように優先順位をつけて全体の予算を配分していくのかという大変むずかしい課題も新たに生まれることも忘れてはなりません。

こうした中、平成28年度当初予算案においては、県立学校老朽化対策事業として1億1千百万余円が計上されました。内容は、平成30年度までを目途に策定する学校の「個別施設計画」のための外部有識者による検討委員会等に関する経費のほか、計画策定を待たずに早急に対策を講じる必要のある校舎等の大規模改造の設計費となっております。さらに先月8日には、昨年取り纏められた基本計画を踏まえて、新城高校と新城東高校の平成31年度以降の統合などを盛り込んだ「県立高等学校教育推進実施計画」が公表されました。計画策定や当面の大規模改造を行うに当たって重要な視点は、校舎等の老朽化の状況を勘案し将来的な生徒数の減少を踏まえ、改築や建物の集約化などの施設の更新手法や施設規模の適正化の検討を念入りに行っていくことであります。ただし、効率化だけを追い求めて、生徒減少に伴い単純に学校をなくせば良いと言うわけにはいきません。平成27年10月29日に県が開催した「行政改革の推進に向けた外部有識者による公開ヒアリング」では、「県立高等学校施設の老朽化対策等」をテーマに議論がされましたが、その中でも、「高度経済成長期を中心に整備された現在の施設や利活用のあり方をそのまま踏襲するのではなく、生徒数の減少など社会環境の変化や教育内容の多様化を踏まえながら、今後の施設配置・利活用計画を検討すべきである。」との意見も出ております。加えて計画策定にあたっては、愛知の教育の両輪である私学や市町村教育委員会から意見を伺うなど、本県教育の全体像を踏まえることも当然必要となるはずですし、さらに言えば、19年連続して全国で最も低い、本県の高等専門学校を含む全日制高校への進学率の問題も、計画策定と決して無関係ではないと考えます。

ここで、改めて県立学校の老朽化の状況を地域別に見てみますと、築後30年を経過した学校施設の割合は、建物規模の大小がありますので棟数ベースではなく面積ベースでお示ししますが、最も割合の高い名古屋地区では89.8パーセントが該当しますし、最も低い西三河地区でも77.7パーセントとなっており、県内全体では約85%の学校施設が既に30年を経過しています。また、平成27年10月に策定された愛知県人口ビジョンを見てみますと、将来の人口推計では、名古屋市近郊や尾張東部地域、西三河地域では、2030〜2040年頃でも2010年の人口を上回る市町村が多く、その一方で三河山間部や知多半島南部の市町村では人口減少が急速に進んでいくことが見込まれています。このように、地域毎に状況が異なるわけですから、学校や地域の実情に応じた計画の策定は、容易なものではないと思います。また、長寿命化対策に費用を投じた場合、30年間程度は施設が存続使用されることになりますし、大規模改造工事の対象34棟も多額の経費が想定されます。いずれも、将来にわたって必要な規模や配置などを十分に検討した上で、補修工事に着手すべきと考えます。

そこで、伺います。来年度からの3か年で、県立学校施設の長寿命化を盛り込んだ個別施設計画を策定するにあたり、どのような視点あるいは理念で進めていかれるのか、お示し下さい。

 また計画の策定に当たっては、本県教育全体への影響も視野に入れ、外部有識者のみならず、市町村教育委員会や私学、さらには地域の方々などのご意見もお聞きしながら検討を進めていく必要があると考えますが、どのような体制で、どういったスケジュールで進めていかれるのか、具体的にお示し下さい。

 続いて、ソフト施策に関する質問に移ります。今回の質問では、ここ数年行政分野において、将来の財政負担軽減を図る手法として期待が高まっているソーシャルインパクトボンド、通称SIBについてお聞きして参ります。

 SIBとは、『社会的なインパクト、成果に対する投資』という意味で、大幅な公費削減と業務見直しを迫られたイギリスで2010年に始まって以来、世界各国に広がりつつある新しい官民連携の社会的投資モデルのことであります。

 我が国では、まだあまりなじみのない取組でありますので、その仕組みを簡単に紹介させていただきます。行政分野において、将来発生が見込まれるか、または増大すると想定される社会的コストを、予防的施策で削減できる可能性のある事業を選定し、核心的な予防措置を実施するNPOなどのサービス提供団体に委託します。事業資金は、いきなり公的資金を投入するのでは無く、その事業に賛同する篤志家や助成財団、またCSR活動を行う企業等を含む民間投資家から調達し、新たな予防的な施策・行政サービスを実施します。その際、事前に事業の実施効果をシミュレーションして、目標とするコスト削減費を含めた社会的成果を設定しておきます。事業実施後、目標を達成した場合、行政は削減されたコスト分の一部から、サービス提供団体の事業実施経費と投資家への成功報酬・リターンを支出する仕組みです。従来かかっていた行政コストの範囲内で、新たな事業実施コストと投資家へのリターンをまかない、さらに行政側のコスト削減も実現できるというもので、行政は民間資金を財源に事業を行えるため、財政リスクを回避しながら新しい事業に試行的に取り組むことができるというメリットがあります。原則的には、目標達成できなければ、行政は一切費用負担しなくても良いわけです。従来の行政による事業遂行においては、結果として十分な成果が出なくても仕組み上予算を支出せざるを得ませんが、このSIBでは成果が出てから行政が費用を支出するというもので、ここが最大の特徴です。尚、民間投資家のモチベーションあるいはメリットとしては、社会的課題の解決に関わることができること、さらにその事業に出資したという広報的なメリットも生まれることに加えて、事業の成果が出れば成功報酬も得られる可能性があるわけで、この点が従来の社会貢献事業との大きな違いです。

 諸外国では、既に様々な取り組みが行われておりますので、具体例のひとつとして、世界で初めてイギリスで2010年9月に始まったピーターバラ市の事例をご紹介致します。このSIBは、ピーターバラ刑務所を出所した元受刑者の再犯率が高く、結果として司法コストなどが高まり財政を圧迫していた状況を改善するために、これまで更生プログラムを受けていなかった短期受刑者3,000人を対象に事業が行われました。成果指標には、退所後1年間の再犯及び有罪判決率を10%以上減らすことを掲げ、そのための職業訓練等の社会復帰プログラムが実施されたわけです。事業予定期間は2010年からの約6年間とし、17の財団や民間投資家から500万ポンドの出資を得て、再犯率を下げる事業をNPOに委託し、事業開始後5年目には中間評価が行われました。その結果、事業期間はまだ1年残っていましたが、すでにプログラム受講者の再犯率は想定通りの減少成果が確認できたため、今年からは司法省とNPOが直接事業を実施していくこととなったそうです。この他にもアメリカやオーストラリア、オランダ、カナダ、ドイツなど、世界10か国ほどでこのSIBが活用されています。主な事業領域としては、若者の就労支援や生活困窮者支援などの事例が多くみられますが、昨年スタートしたポルトガル初のSIBのように、小学生を対象にプログラミング技術の教育を行う事業もあります。

日本でも公益財団法人日本財団と特定非営利活動法人SROIネットワークジャパンがSIBの推進を主導しており、国内初の試みとして、平成27年4月から横須賀市で特別養子縁組推進のパイロット事業が始まりました。そこで先月、横須賀市に伺い調査して参りましたので、横須賀市のパイロット事業について紹介させていただきます。横須賀市では、養育が必要な子どもを対象に特別養子縁組を推進し、平成27年度中に4人の縁組を目指しています。仮に、子ども4人が18歳になるまで横須賀市内の児童養護施設で過ごすとすると、横須賀市は約3,530万円の財政支出が必要となります。ちなみに、この金額は、人件費等の固定費を除いた流動費のみで、国からの助成も除いた金額です。しかし、4人の縁組が成立した場合には、その縁組支援に必要な事業費として、人件費、研修費、カウンセリング費、交通費等で、合計約1,900万円で済みますので、横須賀市としては差し引き約1,630万円を節減できることになります。この中から、投資家へのリターンを支払ったとしても、残りの金額は行政コスト削減分となるわけです。ただ、今年度は、日本財団が事業費を負担するパイロット事業のため、事業が成功しても横須賀市から投資家である日本財団にリターンは支払われません。今後横須賀市では、日本社会事業大学による第3者評価を受けるなど、今回の検証結果を踏まえつつ、次年度以降の取り組みについては、別のテーマでの導入も含め検討していくそうです。

もちろん、わが国初の取組ですので、この事業を実施してみて明らかになった課題もいくつかあります。例えば、受託者である一般社団法人のベアホープからお聞きしたところでは、事業開始までに保健センターや児童相談所などの関係部門との事前調整や意志合せを十分に行うべきであるとの指摘のほか、適切な事業実施期間や事業目標、評価指標の設定なども重要な課題として挙げられたのも事実です。ただ、メリットとしては、民間主導で取り組むため行政の境界を越えて、全国的な規模で養父母を探しやすくなったとのことですし、吉田雄人横須賀市長からは、「以前から特別養子縁組事業に関心があったが、ノウハウも無く取り組めなかったところ、このSIBという新たな手法のお蔭で一歩を踏み出すことができた。」とのお話も伺いました。さらに横須賀市のSIB導入の窓口である政策推進部の責任者からは、SIB の長所として次の3点が示されました。一つは社会的事業に新たに取り組むときに、効果が得られないかもしれないというリスクを負うことなく、新たな事業に着手できること。二つ目は、行政コストを低減することができるとともに、社会的価値の高い事業を実施できる可能性があること。三つ目は、民間事業者の持つ専門的な知識やノウハウ、人材、ネットワークなどが活用できることであります。

今、お示しした横須賀市の他にも、SIBのパイロット事業として、尼崎市ではひきこもりの若者にケースワーカー等がアウトリーチし、既存の就労支援事業へつなぐ取組が行われています。また福岡市や松本市などでは、公文教育研究所と東北大学の川島隆太教授が中心となり開発された学習療法による認知症高齢者の介護度改善及び認知症予防のためのプログラムを実施し、公的コスト削減を明らかにする事業が行われていますが、これらはあくまでもパイロット事業の段階であり、現時点で本格導入している自治体はありません。

そうした中、昨年来私は、日本国内での取組を主導している日本財団へのヒアリングを重ね、情報収集を行って参りました。中でも、11月に日本財団で開催されたソーシャルインパクトボンドセミナーは、行政機関、投資家、NPO等、120名以上が参加する熱気溢れるセミナーで、塩崎厚生労働大臣による冒頭挨拶にはじまり、SIB最新情報から日本における取組みの現状と課題などを詳しく学ぶ機会となりました。印象的だったのは、想像以上に投資家の参加が多く、質疑応答も活発に行われており、関係者の関心の高さを改めて実感致しました。その折に、日本財団社会的投資推進室の工藤七子室長と意見交換を行い、日本でのSIB実施に当たっての課題は何かとお聞きしたところ、「設定した社会課題が解決されたという状態を、いかに評価するのかというのは難しい課題で、評価方法を開発しながらやっているところです。評価の仕組み作りもこれからのチャレンジだと考えています。」とのことでした。このようにSIBには、まだまだ課題はあるわけですが、民間資金を活用するSIBは、中長期的に見ても極めて厳しい財政状況への対応や、官民連携による課題解決の有効な手法として、大きな可能性を持っているのではないかと考えます。

こうしたSIBの取組については、平成27年6月の「骨太の方針2015」や「まち・ひと・しごと創生基本方針2015」にも明記されて以降、昨年11月に開催された「第2回 一億総活躍国民会議」における厚生労働大臣提出資料においても、地域づくりの推進にSIBなどの活用が示されるなど、少しずつ国による具体的な動きも出てきており、今後、休眠口座預金の有効活用など、更に踏み込んだ取組が期待されております。

都道府県レベルでもSIB導入への研究が少しずつ始まっており、大阪府では昨年12月に学識経験者や社会福祉関係者などからなる「ソーシャルインパクトボンドを活用した大阪独自の生活困窮者自立支援のための新たな仕組みづくり研究会」が設置されたところであります。先日大阪府に伺い、研究会の事務局を務める福祉部地域福祉推進室の方々からSIBに取り組み始めた経緯や進捗状況、課題等についての調査を行って参りました。SIB導入を全庁的課題として捉え、福祉部だけでなく他部局においても研究を行っており、引き続き導入に向けた取組を続けていくとのことでした。また、神奈川県でも「がん検診率向上による医療費削減」をテーマに研究を続けているとの情報もあります。

本県では、昨年度策定した「しなやか県庁創造プラン」により「民間活力の活用」や「地域との連携・協働の推進」に取り組んでいます。日本初の道路コンセッションや愛知総合工科高校の公設民営への取り組みなどを精力的に進める本県としても、SIBを行革の新たな取組みと位置づけ、導入に向けた庁内研究チームを早急に立ち上げ、是非我が国初の本格導入に繋げて頂きたいと思います。SIBは、全ての政策課題・分野に適した手法ではありませんが、新しい事業を開始する際に、リスクが極めて少ない手法として有効ですし、うまく活用できれば将来増大する社会保障費の抑制にも資する手法だと思いますので、まずは導入可能な分野の検討から始めていただくことが必要だと考えます。私がSIB導入テーマの候補の一つとして提案したいことは、SIB手法を活用して外国人児童生徒への日本語学習指導を一層充実させ、ここ数年、全日制・定時制・通信制を合わせて70パーセント前後で推移している、本県外国人生徒の高校進学率向上に繋げる取組です。現在も教育委員会などによって取り組まれてはいますし、先程答弁もありましたが、新たな手法でさらに強力に推進することは、日本語指導が必要な外国人児童生徒数が6,000名を超え、全国一となっている本県らしい試みではないでしょうか。また、県内市町村とも協働し、それぞれの市町村固有の課題解決に向けたモデル事業にも大いにチャレンジすべきと考えます。

そこで、伺います。現時点での愛知県としてのSIBに対する評価と庁内研究チーム発足も含め、今後の取組についてお示し下さい。

 以上、「県立学校の長寿命化計画策定について」並びに「行政コスト削減に資する民間資金の新たな活用法・ソーシャルインパクトボンドについて」それぞれ伺ってまいりました。県当局の前向きで明快な御答弁を期待して、壇上での質問を終わります。御清聴、誠にありがとうございました。

 



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